「人に困ったら人材派遣」。そんなぼんやりとしたイメージはあっても、「結局何なのか?」
という部分について突き詰めて考えた事がある方はあまりいらっしゃらないと思います。
そこで今回のコラムでは「派遣のそもそも論」についてお話させて頂きます。派遣とは何なのか?料金体系はどうなっているのか?人材紹介とは違うのか?等々。
初めて派遣の利用を検討される企業様にわかりやすいよう、ざっくりと特徴を解説致します。
1.派遣とは要するに何なのか?
まずそもそも論。企業にとっては人材派遣とは・・・
①自ら雇用することなしに、
②自社に必要な人材を、
③必要な期間だけ
④自らの指揮命令下に置き業務に従事させる
ことができるサービスです。
上記の特徴を1つずつ解説します。
①自ら雇用することなしに
実際にお仕事をする人材の雇用主は「派遣会社」です。よって、御社の方で雇用に関する様々な対応を行う必要はありません。
例えば、社会保険、雇用保険、労災、給与支払い、年末調整等々・・・書き出せば切りがない雇用主としての義務から解放されるという
大きなメリットがあります。
②自社に必要な人材を
派遣の依頼をする際にはある程度の条件設定が可能です。代表的なところでは、曜日、時間、日数といったシフトや、業務に必要な経験やスキル等がこれにあたります。
人選の段階であらかじめ条件が指定することで、結果自社に必要な人材を迎え入れることが可能となります。
③必要な期間だけ
人材派遣は「契約期間ありき」のサービス、つまり、「いつからいつまで」という期間が前提となるサービスです。
例えば、「繁忙期の3ヶ月間だけ」、「社員のケガの復帰までの2ヶ月間だけ」等々。
人材が必要な期間が限られている場合などに、それでも発生する雇用主としての義務(※前述の①参照)を回避して人材を業務に従事させることができるというメリットがあります。
④自らの指揮命令下に置き業務に従事させる
雇用関係にない人材へ業務の指示をすることは一般的には労基法違反となりますが、派遣は例外的にそれが認められています。
繰り返します。企業にとって人材派遣とは、
「自社で必要な人材を、必要な期間だけ、雇用関係なしに、業務に従事させることができる」サービスという事になります。
2.人材派遣の料金について
次は気になる料=費用のお話。「派遣料金」と「派遣スタッフの賃金」を混同されがちですが、人材派遣の利用料金は「外注費」として派遣会社に請求書払いをします。
スタッフを雇用しているのは派遣会社ですので、御社の支払いは「給与」ではなくあくまで「外注費」となります。また、スタッフへの給料の支払いは雇用責任に基づき派遣会社が担当致します。
そして料金の内訳はざっくり説明すると以下の通り。
「スタッフ賃金」+「派遣会社の利益」=派遣料金
「派遣料金」とは見積もりの段階で派遣会社が提示してくる「1時間当たりの派遣料金」の事であり、料金計算の最低単位。
「お宅は1時間いくら?」、「当社は1時間〇〇円です」といったやり取りがお客様と派遣会社との打ち合わせの際に行われます。
また派遣会社に見積もりを依頼すると、「1,700円/1時間」と記載された見積書が提出されてきます。
1時間単位の派遣料金はスタッフが稼働した時間に乗じて計算します。
例えば、派遣料金が1700円、1日8時間、月間20日勤務のスタッフの場合の料金は、
【例】
1,700円×8時間×稼働日数20日
=27,2000円+税
と至ってシンプル。
上記以外に費用は発生しません。例えば社会保険や厚生年金、雇用保険、労災の支払いなどもすべて雇用主である派遣会社の負担となります。
またスタッフが稼働しない段階では費用は発生致しません。よって、スタッフの提案や顔合わせの費用は無料。また勤務開始後、スタッフが欠勤した場合にも費用は発生致しません。
派遣の料金はあくまで一時間当たりの派遣料金×時間数×日数であるとお考え下さい。
3.派遣と紹介の違い
さて、次のポイントは派遣と類似するサービスである「人材紹介」との相違点について。
混同しやすいこれらのサービスの違いについて説明致します。
それぞれのサービスの特徴を一言でいうと、
【人材派遣】
雇用関係にない人材を自社業務に従事させる事ができるサービス。
【人材紹介】
自社雇用する人材を紹介してもらう。
となりますが、もう少しわかりやすく。
【人材派遣:リース】
・派遣会社が雇用している人材を貸してもらう:月々の費用が掛かる
【人材紹介:販売】
・自社で雇うための人材を売ってもらう:費用は一度で終了
暫定的に人材が必要な場合には派遣を、また社員のように恒常的に人材が必要な場合には人材紹介を選択するのが一般的と言えます。
昨今の人材不足で、人材派遣を恒常的に利用される企業も多くなってきており、2つのサービスの使い分けに悩むところですが、人材派遣は担当業務に制限があります。
よって、会社の仕事を何でもやる人材が必要な場合(多くの場合は社員)には人材紹介を選択するというケースが一般的と言えるでしょう。
4.変わる派遣の利用目的
さて、人材派遣のそもそも論として、「派遣とは何か?」そして、派遣の大きな特徴についてザックリと解説致しました。
最後は、派遣を利用する目的の変換についてお話を。
①製造派遣の解禁前
製造業派遣が解禁される以前まで(2004年3月まで)は、「派遣=キャリア・スキル」という考えが浸透していました。
それ故派遣スタッフはそのスキルを売りに、企業はそのスキルを自社で活かしてもらう為に人材派遣を利用するという形態が一般的であり、今では珍しくない「未経験の派遣社員」という存在は皆無に等しかったと考えます。
②製造派遣解禁後
しかし製造業派遣が開始されてからはこれが一変。
派遣スタッフはより柔軟な働き方を実現する手段として、企業は未経験でも担当できる簡易な業務の人材確保の手段として人材派遣を利用するという形態がポピュラーに。
結果、「未経験の派遣社員」という存在が一挙に増加していきました。
③現在
そして現在。働き手はよりよい仕事探しの選択肢の一つとして。企業はとにかく人が採れない時代に何とか人材を確保する手段として人材派遣を利用することが主流となっています。
求人チラシを使っても、ハローワークに出向しても、自社のホームページに求人を掲載しても、とにかく「何をやっても人が採れない!」。
そんな求人にお困りの企業様にとっての最後の手段(料金が高いので)が現代の人材派遣の主たる利用目的であると考えます。
人を軸に置いた人材派遣サービスは法律で厳格に管理された制度である一方で、時代に即して柔軟に変化を続けています。
人がますます採り辛くなる時代です。自社の人材確保の一手段として人材派遣を取り入れ、変
わり続ける時代によりフレキシブルな採用方法を確立していくことをお勧めいたします。