パートで働く方がなら誰もが気にする、「103万円」、「130万円」の壁。
ただでさえよくわからないこの壁。
残念なことに2022年10月からもう一つの壁についても考える必要が出てきました。
それは「106万の壁」。
今回のコラムでは、最近よく耳にする「106万の壁」について極めて分かりやすく解説をさせていただきます。これを読めば、
・そもそも「106万の壁」って何?
・自分に関係があるの?
・関係あるのかどうか、どうやって判断する?
という疑問や不安も解消です!
※なお、103万、130万の壁については以下の記事にて詳しく解説しておりますので、併せてご覧ください。
【参考サイト】
扶養パート「103万?」、「130万?」
1.「106万の壁」ってつまり何?
(1)前提
106万の壁とは何かというお話の前に、まずはその壁が問題となる対象者のお話から。
パートで働く方の中で「106万の壁」が関係してくるのは、
・現在社会保険に加入している方
であり、かつ
・自分で保険料を払わず、主たる生計者の保険上の扶養に入っている方
に限定されます。
平たく言えば、ご主人が加入している社会保険にぶら下がる形で社会保険に加入している方が対象。一般的にはサラリーマンの奥様といえばわかりやすいでしょうか?
従って上記に該当しない以下の方は、「106万の壁」問題においては対象外であり、現時点では特別対策などを考える必要はありません。
【106万の壁が関係ない方】
①年収103万円以内で働いている方
②自分で社会保険に加入している方
③国民健康保険に加入してる方
(2)106万の壁とは
(1)の前提を踏まえた上で、「106万の壁」とは何かを説明します。
106万の壁とは一口に言えば、
年収が106万を超えてしまうと、社会保険に『自分でお金を払って』加入しなければならず、
そのボーダーである106万円を壁と表現している。
という事になります。
これまで社会保険加入のボーダー、つまり「壁」は年収130万でした。
※「130万の壁」とはこのことです。
それが今回の法改正で年収106万円にグッと引き下げられるたというわけです。
理由は不明ですが、おそらく不足する社会保険や年金の財源を確保することを目的に、今まで社会保険に加入しながらも保険料を払わなかった方にも費用負担をしてもらおう、つまりは「保険料を払って頂こう」という目論見からでしょう。
お話を戻します。
要するに年で106万円以上稼げば、社会保険加入の対象となる。
今までご主人の保険上の扶養に入っていた方、つまり保険料を払わなくても社会保険に加入できていた方も、この条件を満たしてしまえば、「自分でお金を払って」社会保険に加入しなければならなくなってしまったというわけです。
106万円の壁とはつまり、
パートで働く人達の前に突如現れた面倒な障害、ハードルを「壁」を表現していると解釈して間違いありません。
2.拡大する社会保険適用のルール
この106万円の壁ですが、実は2016年から存在しています。
しかし今まであまりこの壁が目立っていなかったのは、このルールの対象となる企業が、
・従業員数501名以上の企業
といわば大企業に限定されていたからです。
ではなぜ最近ことさらこの話を聞くようになったかと言えば、上記の「501名以上の企業」というるルールが大幅に変更され、かつ今後も変更され続けることが決定したからです。
【社会保険適用拡大の流れ】
①2016年~2022年9月:従業員数501名以上の企業
②2022年10月~2024年9月:従業員数101名以上の企業
③2024年10月以降:従業員数51名以上の企業
【参考サイト】
社会保険適用拡大特設サイト
※現在は上記の②の段階です。
2024年にやってくる③の段階では、かなり多くの中小企業も含まれることから、今回の適用拡大以上の騒ぎになることが予想されます。
パートで働く皆様も、余裕がある今のうちに社会保険との付き合い方を検討しておくことをお勧めいたします。
3.会社の規模=従業員数をチェックする
さて、ここからは自分が106万の壁に該当するかどうかというお話。
まず自分が勤務する会社が、前述の社会保険適用企業に該当するかどうかを確認してください。
要するに自分が勤務する会社が、
②2022年10月~2024年9月:従業員数101名以上の企業
従業員数101名以上の企業に該当するかどうかを確認するという事です。
※【超重要】従業員数の数え方
ここで極めて重要なポイントをご紹介。
ここでいう従業員数とは、
①フルタイムの従業員数
と
②フルタイムの3/4以上の従業員数
の合計のこと。これは以下のように言い換えることができます。
①フルタイムの従業員=週5日、1日8時間=週40時間の勤務者
と
②フルタイムの3/4以上の従業員=40時間の3/4=週30時間以上の勤務者
お気づきの通り、この従業員数のカウントには週30時間未満の労働者は含まれません。
という事はどうなるか?
例えば、
・フルタイムで働く社員さんが50名、
・週30時間未満で働くパートさんが60名いる会社の場合、
今回の法改正で新しいルールとなった、
従業員数101名以上の企業
には該当しないという事になります。
繰り返しになりますが、法改正における「従業員数」とは、
①フルタイムの従業員=週5日、1日8時間=週40時間の勤務者
と
②フルタイムの3/4以上の従業員=40時間の3/4=週30時間以上の勤務者
の合計が101名以上であることです。
上記①、②に30時間未満で働くパートさんは含まれませんので、総勢100名以上の企業でも実は要件を満たさない企業がかなり多いのです。
このことを知らない方、また知らない企業が実は結構多く、
会社の総従業員数だけで社会保険加入かどうかを判断するという勘違いをしているケースが多々見受けられます。
今回の社会保険適用拡大における「従業員数」の定義をまずはしっかり理解した上で、自分が勤務する企業がそれに該当するかどうかの確認を行うようご注意ください。
4.会社が社会保険適用に該当する場合
上記の方法で従業員数を確認し、(残念ながら)会社が社会保険適用に該当する場合、今度は自分の働き方が社会保険の加入に該当するかどうかを確認します。
前項で紹介した「従業員数」が会社の適用条件なら、この項で紹介するのは「個人の適用条件」ということになります。
個人の適用条件
(1)週の労働時間が20時間以上である
(2)月額賃金が8.8万円以上である(賞与、交通費、残業代は含まず)
(3)2ヶ月を超える雇用の見込みがある
(4)学生ではない
これが個人の社会保険適用の基準となります。
3.で紹介したルールが当てはまる会社にお勤めで、かつ上記の(1)~(4)を全て満たした場合には、(残念ながら)社会保険の加入は必須となります。
社会保険に入りたい方にはラッキーな、そうでないかたにはアンラッキーな結果となりますが、どうしても加入したくない場合には勤務時間を減らすなどの対応を取れば社会保険の加入は回避することが可能です。
自分の意思を会社にしっかりと伝えて、対策を練っていくことをお勧めします。
5.正しい知識をもって対策を
以上、パートの収入において注目されている「106万の壁」とそのルールについてお話をしてまいりました。
文中でも触れていますが、今回(2022年10月)の適用拡大はまだ途中であり、2024年には社会保険の加入要件がもう一段階拡大されます。
今回は上手く回避できた方も次回、2024年の改正においてははどうなるかわからないため、余裕がある今のうちに対策を検討することをお勧めします。
お金の事だけを考えれば「ガンガン働く」のも正解。働き損を避けるには「勤務のペースを落とすのも正解」。そして、社会保険の加入により収入が減っても、今と同じ働き方が自分の生活リズムにあっているならば、それはそれで正解だとも言えます。
お金の事は大切ですが、自分がどういうリズムで働いていたいかという部分も大切に、今後の対策を立てていきましょう。
2.拡大する社会保険適用のルール
3.会社の規模=従業員数をチェックする
4.会社が社会保険に適用する場合
5.正しい知識をもって対策を