派遣会社から自社への派遣スタッフの提案を受ける際に、人材派遣会社から提出される「スキルシート・略歴書」と呼ばれる書類をご存知でしょうか?
今回のコラムでは、派遣スタッフを選考する際の第一の資料となる「スキルシート・略歴書」の意味や役割、そしてチェックしておきたいポイントについて解説します。
1.履歴書が提出されない理由
派遣先は履歴書を見ることはできない
一般的な採用選考では、本人の経歴やスキルを知るために「履歴書」や「職務経歴書」を使用するのが通例です。派遣会社から人材の紹介を受ける場合にも、つい履歴書の提出を求めたくなりますが、派遣を利用する企業(派遣先)が派遣会社に対し、派遣スタッフの履歴書の提出を求めることは原則禁止とされています。
特定目的行為の禁止について(厚生労働省HPより)
特定目的行為とは何か?
履歴書の提出を禁じる「特定目的行為の禁止」とは何か?難しい表現でアレコレとお達しが出ておりますが、要するに、
①派遣スタッフの人選の最終決定権は、雇用主である派遣会社にある。
②派遣先は業務の指示(指揮命令)以外の事をしてはいけない
③派遣先は業務と関係のない情報の提供を求めてはならない
こんな事が書いてあります。そして、
③で定義される「業務と関係のない情報」にカテゴライズされる情報は、「年齢、性別、住所、学歴、趣味、家族構成」等があり、それらがまとめて記載された書類と言えば・・・・そう履歴書なんです。
このため、派遣先はスタッフの歴書の提出を派遣会社に求めてはならない
という理屈が成り立つわけです。
※「特定目的行為の禁止」については、その内容や遵守の状況と併せ改めてコラムで紹介致します。
履歴書の代わりに提出されるもの
履歴書の提出を求められない以上、派遣スタッフのスキルや経歴が分かる代替資料が必要となります。そこで登場するのが、「スキルシート・略歴書」といった書類です。
「スキルシート」、「略歴書」、「紹介状」、「スタッフカード」、「スタッフシート」等々、呼び名が派遣会社により異なりますが、いずれも、自社に派遣されるスタッフの経験、スキル等が記された資料と考えて良いでしょう。
尚「プロフィールシート」という似たようなニュアンスの書類がありますが、こちらは新卒生の就活やお見合いパーティー、営業用の自己開示の資料といった用途が中心のため除外しております。す。
さて、呼称はともかくとしてスタッフのスキルや経歴を確認できる履歴書の代替資料は、
「スキルシート」と「略歴書」の2つに絞られます。
次の項からは、この似て非なる二つの書類について、それぞれの役割と違いについて解説していきます。
2.スキルシートと略歴書の違い
まずは用途の違いについて。端的に申し上げると、
スキルシート:技術職向け、エンジニアの派遣に使用
略歴書:上記以外の職種に使用
という大きな違いがあります。用途が異なる為、それぞれの書類に記載される内容は、同じようでいて異なります。
≪記載内容について≫
スキルシート | 略歴書 | |
本人の情報 | 名前、年齢、市町村までの住所 | |
職歴 | 転職歴を履歴書通りに記載 | |
担当業務 | 詳細まで記載 | |
ポジション | 詳細まで記載 | 所属部署程度 |
業務(開発)実績 | 詳細まで記載 | 特に記載なし |
所持資格 | 通常に記載 |
記載内容に大差はないと感じますが、スキルシートの方が、業務におけるポジションやその実績まで深堀りしていることが分かります。
上記を踏まえて、それぞれの違いについて細かく説明していきます。
3.スキルシートとは?
スキルシートとは読んで字の如く、派遣スタッフが持っている「実績に裏打ちされた技術や経験=スキル」を表現したものです。本コラム上では便宜上「履歴書の代替の書類」といってはおりますが、職歴や実績の確認において履歴書をしのぐ内容といってよいでしょう。
主に技術職(エンジニア)の派遣に使用
スキルシートの主な使いどころは、技術職のスタッフの紹介です。プログラミングやSE職、WEB系の開発やデザインなどを中心としたIT系の業務や、製造、開発系といった技術系のエンジニア職の人材を派遣する際に使用されます。
これらの職種には、複数の会社が乗り合って進めるプロジェクト式の業務等も存在し、参画したプロジェクトの内容や規模などについても記載があるなど等、本人の持つスキルや経験を余すところなく記載されているのが特徴です。
専門職は持っている経験や技術が最も重視されるため、スキルシートの提出は必須といってよいでしょう。
4.略歴書とは?
略歴書とは、簡単に言えば派遣スタッフの現在まで職歴を簡潔に記した書類の事です。スキルシートの様に派遣スタッフの技術面・スキル面にフォーカスした書類ではなく、職務経歴をまるっと紹介するための資料とお考え下さい。
ほぼすべての職種の派遣に使用される
それ故、スキルシートと比べて汎用性が高く、事務職からサービス業、介護、軽作業・工場系職種等、技術系以外のほぼ全ての業務の派遣において使用されます。また特定のフォーマットが決まっているわけではないので、技術やスキルを深耕しなければ、当然エンジニア職の派遣においても利用することが可能です。
スキルシートという名の略歴書もある
技術職以外の職種、例えば事務職等の一般職、飲食店のホールスタッフ等のサービス職の派遣においても、「スキルシート」という名称で派遣スタッフの提案が行われる場合もあります。
もちろん内容について、その仕事に必要となる情報がしっかり盛り込まれたものではありますが、技術・専門職と比べて表現しずらいスキルが多い職種や、未経験OKの職種への派遣の場合には、スキルシートは本来の役割を果たさず、ある意味で「名前はスキルシート」で「実態は略歴書」となるケースも多々見受けられます。
5.内容は派遣会社にリクエストできる
派遣スタッフの提案時に履歴書の代わりに派遣会社から提出される、スキルシートと履歴書。それぞれの違いと役割についてはご理解いただけましたでしょうか?
それぞれの書類に記載される内容については一定のフォーマットがあるものの、派遣先に併せて変更することも可能です。法に触れない範囲(業務に関係のある範囲)であれば、当然「こんな事を記載してほしい」、「教えてほしい」と作成者となる派遣会社にリクエストすることも可能です。
業務との派遣スタッフとのマッチングの為に、また社内の稟議のため、書面への記載が必要な場合には、派遣会社に記載内容を遠慮なくリクエストしてください。
きわどい内容は口頭で確認
ちょっと余談です。
例えば、家族構成やお子様の有無といった情報は、法律通りに考えれば「業務に直接関係のない情報」となりますが、親の介護や育児の都合がシフトに与える影響などを考えた場合、十分に業務に関係のある情報と定義が出来ます。
働く方への配慮や気兼ねなくお休みできるための準備のために、プライベートな情報を確認することは善意でしかないとは思いますが、やはり一応のルールを考えた場合、
①何のためにその情報を収集するのかを派遣スタッフ本人に説明・納得してもらい、
その上で、
②口頭などで派遣会社から伝えてもらう
という方法を採るのがベストかと当社は考えます。