派遣の利用期間と人材派遣の3年ルール

個人単位の抵触日_対策

このページでは企業が人材派遣を利用する上で知っておきたい派遣の利用期間について解説します。

「人材派遣っていつまで使えるの?」という単純な疑問から、最近よく聞く「派遣の3年ルール」についても分かりやすく説明いたします。解釈が複雑な派遣の期間もこの記事でスッキリ!

1.派遣の最低利用期間について

派遣期間のルールについて。
まずは簡単に理解できる、派遣を利用できる「最低期間」について説明します。

人材派遣が利用できる最低(最短)の期間は、

31日(1ヶ月)以上から

となります。

派遣期間が1ヶ月に満たない、1日単位、1週間単位での人材派遣は、一部の例外を除き対応できない派遣会社がほとんどです。

かつては1日単位で人材派遣を利用することが可能でした。

しかし、平成24年の改正労働者派遣法の施行に伴い、「日雇い派遣」、つまり派遣会社との雇用契約が1ヶ月に満たない労働者の派遣は、一部の例外を除き原則禁止となりました。

※尚、以下の例外に該当する場合には、日雇いでの派遣が可能となります。

≪以下に該当する労働者≫
・60歳以上
・学生(定時制以外)
・長期の就職先が決まっている
・自身(世帯)の年収が500万円以上

≪以下に該当する業務≫
ソフトウェア開発/機械設計/事務用機器操作/通訳・翻訳・速記/秘書/文書ファイリング/調査/財務処理/取引文書作成/デモンストレーション/添乗/受付・案内(駐車場管理を含まず)/研究開発/事業実施体制の企画・立案/書類などの製作・編集/広告デザイン/OAインストラクション/セールスエンジニアの営業/金融商品の営業

出典※31日未満でも派遣可能な「政令で定める業務

日雇い派遣ができない本当の理由

「日雇い派遣」が禁止になった結果、派遣会社は派遣スタッフと「1ケ月以上の雇用契約」を結ぶことが義務化され、お客様との派遣契約も「最低1ケ月以上」とする派遣会社が圧倒的に増加しました。

しかし改正派遣法で禁じているのは、あくまで派遣会社と派遣スタッフとの雇用契約の期間についてであり、実は派遣会社と派遣先の間で締結する「派遣契約」には関係がありません。

したがって、例えば派遣会社と既に別の仕事を元にした1ケ月以上の雇用契約がある派遣スタッフであれば、改正派遣法には抵触しないため、理論的には1日単位での派遣、つまり日雇い派遣は可能となります。

ただし、主たる仕事を持つ派遣スタッフが、別の仕事をする。

つまりWワークをするという前提においてのみ派遣が可能という条件では、派遣できる日もかなり限定的になり、緊急性が高い「日雇いでの派遣依頼」に対応することは困難になります。

ルール上、1日単位での派遣はできなくはない。しかし前提条件の厳し故、サービスとして成立が難しい。

当社を含む派遣会社の殆どが派遣の利用期間の下限値を31日=1ケ月以上に設定しているのはこのような理由が背景にあります。

2.派遣期間の上限とルールについて

(1)基本ルールは「3年まで」

人材派遣の利用期間の上限は、基本的には3年間までです。

ただし、3年を超えてもいくつかの対応を行う事で、人材派遣の利用自体は最大で6年間まで延長することが可能です。

派遣をより長く利用するためには、利用の上限に関する以下2つのルールを正しく理解し、それぞれに対策を行う必要があります。

期間に関する2つのルールとは

a)事業所単位の抵触日
派遣の利用者(派遣先)に対し、人材派遣の利用自体を3年までに制限する。

b)個人単位の抵触日
特定の派遣スタッフの継続勤務を3年までに制限する、

派遣の上限利用期間を意味する「3年ルール」とは上記a)、b)のそれぞれのルールにおける制限期間が3年間であることから来ています。

それぞれのルールについては事項より詳しく解説します。

 

(2)ルール①事業所単位の抵触日

「事業所単位の抵触日」は、企業における人材派遣の利用を3年間に限定するというものです。

注意点は「3年間」とは、派遣を利用する組織(会社や支店、部署等)が人材派遣を利用した通算の期間を意味しているという点にあります。

3年ルール

上の図のAさんの様に、派遣の利用開始から派遣スタッフの変更がなければ、3年間のカウントは簡単です。

しかし、Aさんが途中でBさんにバトンタッチした場合、さらに派遣スタッフがBさんがCさん変更した場合においても、3年のカウントは人材派遣を使い始めたAさんの時点からスタートし、人が変わってもカウントリセットされず、通算で続けられます。

このように、3年の利用期間は企業が人材派遣を利用した全ての期間を指しており、派遣スタッフを変えても、派遣会社を変えてもリセットされるない点にご注意ください。

事業所単位の抵触日を延長するには・・・?

3年間の期間制限は、派遣を利用する事業所などの組織単位での「意見徴収」という手続きを行う事で最大で3年間の延長が可能です。

意見徴収とは、3年を超えて人材派遣の利用を続けることについて社内で同意を得る手続きのこと。

労働組合や労働者の代表(過半数労働者代表など)に対して意見聴衆を行い、会社側と労働者の代表の間で合意形成ができれば、3年以降も人材派遣の利用が可能となります。

長期での人材派遣を見込んでいる場合には必ず「意見徴収」を行うようご注意ください。

意見徴収

※上の図において、3年経過後派遣スタッフがAさんからBさんに代わっている点にご注目ください。意見徴収により、人材派遣自体の継続利用は可能になりましたが、もう一つのルールである、「個人単位の抵触日」の存在により、派遣スタッフは3年目以降は「バトンタッチ」の必要があります。

個人単位の抵触日は次項にて解説いたします。

意見徴収のポイント

3年を超えた人材派遣の利用を可能にするために必要な意見徴収でおさえるべきポイントをまとめます。

【いつまでに?】
派遣の抵触日(3年満期)の1ヶ月前までに。

【誰に対して?】
労働組合に対して。組合がない場合には、労働者の代表(過半数労働者代表など)が対象。

【どうやって?】
派遣の利用期間と延長予定期間が分かる資料を用意し、書面にて合意形成を図る。

【記録の必要性は?】
上記の書面と対応の記録を3年間保存する義務あり。

 

(3)個人単位の抵触日

「個人単位の抵触日」とは同一の派遣スタッフの継続勤務を3年間に限定するというルールです。

前項の「事業所単位の抵触日」を意見徴収により延長したとしても、「同じ派遣スタッフ」に、「同じ部署・組織」で、「同じ仕事」を担当させられるのは、3年間までということになります。

個人単位の抵触日

尚、派遣スタッフが以下のいずれかに該当する場合には、個人単位での抵触日が適用されないという例外も存在します。

≪以下に該当する労働者≫
・派遣元(派遣会社)と、無期の雇用契約を締結している派遣スタッフ
・60歳以上の派遣スタッフ

≪以下に該当する業務≫
・派遣先の一般労働者の所定労働日数の半数以下で、月に10日以下の業務

・派遣先の社員が産前(産後)、育児・介護を取得している場合の代替勤務

・事前に期間が定められた「有期プロジェクト」業務

個人単位の抵触日を延長するには・・・?

派遣利用上のルールとは言え、会社と仕事に慣れてきた派遣スタッフを変更することは簡単なことではありません。
また、自社にあった個性を持つ人材や愛着を持って仕事に臨む人材であれば、「離したくない!」と考えて当然です。

個人単位の抵触日を延長することはできませんが、同一の派遣スタッフに今まで通り勤務を継続してもらうための対策について以下に案内いたします。

同一派遣スタッフに継続勤務させる方法

a)直接雇用にする
派遣会社との契約を「紹介予定派遣」に変更し、対象の人材を自社雇用の社員等として雇いあげるという方法です

「紹介予定派遣」と聞くと正社員での採用をイメージされる方が多いのですが、直接雇用であれば、契約社員やアルバイト・パートでも対応は可能です。

優秀な人材であることを見染め、末永く勤務してほしいと考えている場合には最善の方法です。

b)対象の人材を無期雇用にする
派遣会社-派遣スタッフ間で締結されている雇用契約を期間が限定された「有期雇用」から実質雇用期間がない「無期雇用」に切り替えるという方法です。

書いてしまうと簡単に聞こえるのですが、「無期雇用」とは派遣会社が派遣スタッフの雇用を永続的に保証する事を意味するため、派遣会社の運営状況や安定性にも話が及ぶため、あまり現実的な方法とは言えません。

c)派遣スタッフの勤務部署や担当業務を変更する
3年の個人抵触日を向かえる派遣スタッフに禁じられている事は、

同一の組織で、同一の業務に就く事であり、逆に言えば、別の組織で別の業務に就く事を禁じているわけではありません。

極端に申し上げれば、個人単位の抵触日は「同一の派遣スタッフの所属部署と担当業務を変更する」ことで対応が可能となります。

少々わかりづらいため、図を用いて説明します。

個人抵触日の対策

Aさんの派遣開始から3年目を迎えた派遣先では、人材派遣の継続利用を行うために「意見徴収」を行い事業所単位の抵触日の延長を行いました。

これで会社として3年目以降も人材派遣を利用することができたものの、Aさんにかかる「個人単位の抵触日」の問題が残っています。

人事部では勤務を継続してもらう事ができないため、派遣スタッフBさんにバトンタッチ。

会社に慣れたAさんには引き続き勤務を続けてほしい派遣先あ、Aさんを営業部に転属させ、新しい業務を担当してもらう事にしました。

このように、受入れ開始から3年を迎えたAさんに、引き続き派遣での勤務を継続してもらう場合には、配置転換を行う事で対応が可能となります。

但し、部課の変更により当然担当する業務も異なるため、派遣スタッフの意思確認が何よりも重要となりますので派遣会社と派遣スタッフにしっかりと相談した上でご対応下さい。

ABOUTこの記事をかいた人

1974年7月3日生まれ、中央大学文学部英米文学科卒。千葉県内でパート専門の人材派遣を展開するワークパワー株式会社の営業兼、代表取締役。一児(娘)の父。趣味は旧車バイク乗り・いじり、ドラム、食べ歩き。