人材派遣会社の契約について

契約書

このページでは企業が人材派遣の利用する際に発生する、契約とその内容は契約締結の流れについてご案内いたします。

また派遣契約の締結に伴い発生する契約書などの書類についても解説。派遣の契約に関するサンプルの雛形を登録不要・無料でご利用いただけます。

1.派遣契約の流れと発生する書類

人材派遣の利用が決定(派遣スタッフの勤務が決定した)した後に、発生する派遣契約の流れと、発生する書類の種類は以下の通りです。

契約の流れと発生する書類
  1. 待遇等に関する情報提供
    ・派遣元が「派遣先均等・均衡待遇」を採用している場合にのみ必要。
    ※「労使協定方式」を採用している場合は不要。【発生する書類】
    比較対象労働者の待遇等に関する情報の提供
  2. 抵触日通知書の提出(派遣先→派遣元へ提出)
    ・派遣の利用歴を確認するための書面手続き。
    派遣先(お客様)→派遣元へ提出【発生する書類】
    抵触日の通知書
  3. 基本契約の締結
    ・派遣利用の原則的なルールについての契約。
    ・契約初回利用時に1度だけ締結。【発生する書類】
    労働者派遣基本契約書
  4. 個別別契約の締結
    ・派遣料金や期間、派遣スタッフの勤務シフトなどの個別具体的な条件についての契約。
    ・派遣期間毎の更新が必要。【発生する書類】
    労働者派遣個別契約書
  5. 派遣先管理台帳
    ※派遣スタッフの勤務開始後
    ・派遣利用の記録簿的な意味を持つ書類。
    ・契約ではないが、作成・保存の義務あり。【発生する書類】
    派遣先管理台帳

上記の各ステップで締結する契約や発生する書類については次項より詳しく説明します。

書類の準備は不要です。

派遣の契約や利用にあたり必要となる契約書等の書類は、派遣先=お客様での準備は不要。
全て派遣会社が用意します。

また、様式統一の為にご自社準備した書類の利用を希望する場合にはご利用の派遣会社にご相談下さい。

2.契約書の意味と役割

(1)待遇等に関する情報提供

対応が不要な場合もあります
派遣会社が待遇方式において、「労使協定方式」を選択している場合には、本稿で説明する「待遇などに関する情報提供」は不要となりますので、読み飛ばしていただき問題ありません。

2020年4月1日より施行された「同一労働・同一賃金」に伴う派遣法の改正により、派遣会社は派遣スタッフの待遇を確保することを目的に、以下いずれかの待遇方式を選択することが義務付けられました。

派遣会社が選択する待遇方式

a)「派遣先均等・均衡方式」
派遣スタッフの待遇を似た働き方をする派遣先の従業員に合わせる方法。

b)「労使協定方式」
待遇を労使協定に基づいて作成したルールに合わせる。

派遣会社が待遇方式として、上記a)の「派遣先均等・均衡方式」を選択した場合には、派遣スタッフの賃金等を含む待遇を派遣先にて近い条件で働く従業員と合わせる必要があります。

この際、派遣スタッフが『寄せるべき』条件を確認するために必要な手続きが「待遇などに関する情報提供」であり、それを書き記した書類です

【対応のポイント】
・派遣契約の締結前に対応する
・派遣先(お客様)から派遣会社に提出
・書類は派遣会社が準備可能
※派遣会社がの待遇方式が「労使協定方式」の場合は対応不要。

(2)抵触日通知書の提出

人材派遣の利用は通常「3年まで」という上限期間があります。
法律で定められた制限期間を超えて人材派遣を利用することがないよう、派遣先には、

・派遣をいつから使い始めたか?
・利用の満期(上限に抵触する日)はいつか?

を派遣会社に「抵触日通知書」という書面にて報告する義務があります。

【対応のポイント】
・派遣契約の締結前に対応する
・派遣先(お客様)から派遣会社に提出
・書類は派遣会社が準備可能

利用期限の上限について

人材派遣の利用期間の上限は、
・同一の勤務先で、
・同一の職種に、
・同一の人物を派遣
することを「3年に制限」したものであり、「3年で人材派遣が使えなくなる」という事ではありません。

一定の条件を満たすことで、3年を超えて人材派遣利用することは可能です。
派遣期間のルールについては以下のページにて詳しく説明していますので、ご参照ください。

(3)基本契約の締結

「基本契約」は労働者派遣法で定義される基本的な決まり事や派遣先・派遣元双方が守るべき約束事をまとめた契約であり、「労働者派遣基本契約書」という書面にて締結されます。

尚、基本契約は個別の案件に左右されない派遣利用時の共通ルールについての約束事であることから、契約の取り交わしは、特別な事情がない限り、派遣利用開始時に1度だけ行うのが通常です。

基本契約書の主な記載内容

※派遣法上でに定義される法律が中心

・派遣に関する担当者の定義
・安全衛生に関すること
・個人情報の扱いに関すること
・契約解除に関すること
・損害賠償の扱い

尚、派遣の基本契約は、契約書の取り交わしも含め法律で義務付けられてはいません。

但し人材に関する様々なリスクの回避を目的とし、派遣先・派遣先双方が遵守すべきルールが法律と共に明記された契約書を準備し、その上で合意形成を行うことが通例とされています。

また、締結が義務付けられている「労働者派遣個別契約(書)」(後述)の内容が膨大になり、契約事項の確認が煩雑になることを避けるという目的もあります。

【対応のポイント】
・人材の派遣決定後に対応する
・契約書は派遣会社が用意
・契約は初回時に1度だけが基本

(4)個別契約の締結

個別契約では、派遣スタッフが担当する業務内容や勤務シフトといった勤務条件、また派遣の利用や期間や派遣料金といった派遣の依頼毎に異なる、個別具体的な事項についての契約を取り交わします。

この点において、全ての派遣の依頼について共通するルールを記した前項の「基本契約書」とはその内容や性質が大きく異なります。
また、個別契約の締結は人材派遣を利用する上での派遣先・派遣元双方に義務づけられた必須対応事項です。

個別契約書の主な記載内容

※依頼ごとに異なる内容が中心
≪派遣スタッフの条件について≫
・担当業務内容
・責任者、業務指示者
・勤務シフト(時間、曜日、日数)
・勤務場所など

≪派遣の利用について≫
・派遣の契約期間
・派遣の料金(締日/支払日)など

個別契約は、担当業務内容といった依頼ごとに異なる項目や、派遣の利用期間といった時限的な項目が含まれるため、
依頼内容ごと、期間ごとに

締結する必要があります。
例えば、事務職と軽作業の派遣を依頼する場合には、それぞれで契約が必要となり、現在の契約を更新する場合には新しい期間で契約の結び直しが必要となります。

契約・更新の分だけ契約書の発行が必要となりますが、書類は全て派遣会社が準備してくれますので、大きな負担はありません。

【対応のポイント】
・人材の派遣決定後に対応する
・契約書は派遣会社が用意
・契約は現契約の更新や新規依頼の都度実施。

条件の設定は慎重に!

派遣先・派遣元、双方合意の上で個別契約(書)は法的効力を持っており、記載内容については履行の義務が発生します。

例えば、契約に基づき設定した派遣スタッフの勤務時間を「暇になったので短縮」と簡単に変更したり、「人手が足りるので明日まで」と派遣の契約期間を短縮するといったことは法律で認められていません。

「全て契約書通りにしなければならない」
というほど四角張った契約ではありませんが、契約期間中に内容の変更が起らぬ様、派遣スタッフのシフトや派遣期間といった重要な条件の設定は慎重に行う必要があります。

(5)派遣先管理台帳の作成&保管

派遣先管理台帳は、実際に派遣スタッフを受入れた後に、派遣先に作成、保存が義務付けられている書類です。

求めに応じて提示する必要はありますが、定期的な提出義務などはありません。また最近では書面ではなく、「データ」での作成&保存も認められています。

派遣先管理台帳の主な記載内容

※派遣終了から3年の保管義務あり
1.派遣スタッフの氏名
2.派遣元の情報(名称、所在地等)
3.派遣先の情報(名称、所在地、責任者等)
4.勤務条件(期間、シフト、業務内容)
5.福利厚生(各種保険の加入状況等)

尚、派遣会社は、本書とほぼ同様の内容が記載されている「派遣元管理台帳」という書類の作成・保存義務を負っています。

【対応のポイント】
・派遣スタッフの勤務開始後に作成する
・元帳は「データ管理」でもOK
・雛形は派遣会社より提供あり

3.派遣契約の途中解除・解約について

①期間中の契約解除は原則不可

人材派遣の契約は派遣スタッフの雇用安定の観点から途中で解除することは原則できません。

相当の事情があり、やむを得ず派遣先の都合で派遣契約を中途する場合には、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」(労働者派遣法第29条2及び派遣先指針)に従う事が大前提となります。

②相当の事情とは何か?

派遣契約を途中で解約出来るほどの相当の事情とは例えば、

「会社が倒産の危機にある」、
「派遣の利用や派遣スタッフの勤務それ自体が法に触れるような危険性をはらんでいる」

などの極めて特殊で稀な事情を指します。
例えば、注意や指導で改善が見込まれる派遣スタッフの能力の低さや、派遣先の都合とも言える程度の内容は過去の判例から「相当の事情」とみなされることはありません。

以下の様な事由は「相当の事情」とは言えません。
・派遣スタッフの能力が低い
・プロジェクトの変更で人手が不要に
・売上低下のため経費を削減したい
・自社でスタッフが見つかった

③派遣先が講ずべき措置とは?

やむを得ない事情があることを前提に、派遣の契約を途中で解除する場合に派遣先が守るべきルールとして、
「派遣先が講ずべき措置に関する指針」(労働者派遣法第29条2及び派遣先指針)

があります。少し長くなりますがこの指針について説明します。

派遣先が講ずべき指針

①派遣契約の解除の事前申し入れ
派遣先は、派遣元の合意と解除の申し入れを相当の猶予期間(少なくとも30日以上前に)を持って申し入れること。

②派遣スタッフの就業機会の確保
派遣先は、自社の他の部署や関連会社での就業をあっせんするなど、派遣スタッフの新たな就業機会の確保を図ること。

③派遣元への損害賠償
派遣スタッフの新たな就業機会の確保を図ることができない場合には、少なくとも中途解除によって派遣元に生じた損害の賠償を行うこと。

≪損害賠償≫
・派遣元が派遣スタッフを休業させる場合は、休業手当に相当する額以上を賠償

・契約解除の申し入れが相当な猶予期間をもって行われず、派遣元がやむを得ず解雇する場合、次の賃金に相当する額以上を賠償する。

a)派遣先の予告がないために派遣元が解雇予告ができなかったときは、30日分以上を賠償。

b)解雇予告の日から解雇までの期間が30日に満たないときは、当該解雇の30日前の日から当該予告の日までの日数分以上を賠償。

上記の様に、派遣先の都合で派遣契約を解除する場合には労働者保護を目的とした派遣会社への賠償が必要となります。

この賠償を負ってまで派遣の契約を解除する必要があるという事情こそが「相当の事情」であり、改善の見込みや対応があるレベルの事態ではないことはお分かり頂けるかと思います。

このような前提や求められる対応を考えた場合、実行がおよそ現実的ではないため、派遣契約の途中解除は原則不可能と解釈することができます。

「こうすれば解除出来る」とは考えないこと

前述の通り、派遣の契約解除の条件はかなり厳しく損害賠償などを考えるとおよそ現実的ではありません。
途中解除を検討していた派遣先企業も「派遣先が講ずべき措置に関する指針」の存在を知ると考えを改めるというケースがほとんどです。

その一方で、
・「条件さえ満たせば途中解除ができる」

・「賠償金を払えば契約終了ができる」

という捉え方をする派遣先が存在するも事実です。

解釈の問題ではありますが、契約を解除しないように設定したはずの条件が、「その条件さえ満たせば契約解除しても良い」と取らえられてしまっているということが問題になっています。

あえて申し上げます。
派遣の契約解除は原則禁止です。

そして、現実的には稀にしか発生し得ない「致し方のない相応の事情」がある場合においてのみ、派遣会社や派遣スタッフに大変な迷惑かけることを前提に損害賠償の支払うことで、途中解約の合意形成ができる可能性があるというレベルにしかないことをどうぞご理解ください。

4.派遣契約書・その他書類のダウンロード

登録不要、全て無料でダウンロード可能です。

本頁で説明した派遣に関する契約書や提出書類の雛形のダウンロードが可能です。派遣利用の検討材料として、また書類作成時のサンプルとしてご活用下さい。

※書類の雛形はワークパワーが実際に使用している書類とほぼ同等ですが、記載内容には責任を負いませんので、内容をご精査の上ご活用ください。

ABOUTこの記事をかいた人

1974年7月3日生まれ、中央大学文学部英米文学科卒。千葉県内でパート専門の人材派遣を展開するワークパワー株式会社の営業兼、代表取締役。一児(娘)の父。趣味は旧車バイク乗り・いじり、ドラム、食べ歩き。